北斗七星を祭るのは密教と日蓮宗が有名なのだ
そうだ。源頼朝と一緒に鎌倉幕府を開いた千葉氏
も平将門の挙兵に参加して以来、北斗七星を祭っ
ている。すばる星については麦やソバを蒔く時期
の目安星として、有名だったらしい。
参考：「星の方言集　日本の星」
　       野尻抱影著　中央公論社

　新編鎌倉志に載っていた塔の辻の位置は、とて
も不自然だ。真北と荏柄天神をきっちり示す笹目
の塔の辻に比べて、北斗の柄が長過ぎる。宝戒寺
門前にあった塔が下馬塔として活用されたために、
他の塔も寺の門前に移動されたと思うのだ。では
北斗七星をかたどるには、どこにあったらいいの
か。辻にあったとして、地図を見なおした。
　１）清泉小学校前の通りと付属小学校校門前の
　道路がぶつかる辻。付属小学校の校庭内。
　２）小町と大倉の辻。宝戒寺前。
　３）岩屋不動の通りを延長すると県道に交わる
　辻。八幡宮前バス停あたり。
　４）旧道巨福呂坂と二十五坊の通りの辻。
　５）旧道巨福呂坂山中。扇が谷に向かう辻。
　６）建長寺の前。
　７）亀ケ谷切通と県道の辻。
これで私の空想の塔の辻ができあがった。
秋分点から春分点まで、真っ直ぐな線が八幡宮本
殿を通って伸びている。『古代鎌倉考』を書いた
鈴木千歳さんのいう「赤山の三宝岩」の上を通っ
ていたら良いなあと思う。そこが北極星だから。

　ところで、作図をしているときに、もう一つの
図が描ける事に気がついた。笹目の塔から八幡宮
の新宮の上を通って、横浜市栄区の庄戸の白山神
社に至る線だ。この場合は、北極星が百八やぐら
に、春分点が現在の白山神社になる。夏至の太陽
は十二所神社に、冬至は柏尾川西岸だ。これを新
しい星図と呼ぶことにして、話を続けると、、。
　秋分点、北斗、北極星を地上の星図に描くため
に、塔の辻があるとするなら、すばるは何処か。
　星座早見盤は平面に印刷してあるので、歪みが
ある。それを承知で探した。すばるは荏柄天神に
あたる。新しい星図では天台山の山頂だ。
　これは何だろう。

　荏柄天神がすばるであることを表現する。それ
がこの仕掛けの目的ではなかったか。それが適っ
た時に、仕掛けは改竄されたのではないか。塔が
移動されたのは建長寺(1253)、円覚寺(1282)、
浄智寺(1283)ができて、下馬塔が欲しかった時だ。
北条時頼、時宗、宗政のうちの誰かが、荏柄天神
をすばるにあてることを止めたのだ。源氏は三代
で滅び、北条の幕府になったからだ。そして、荏
柄天神とは何だったのか、菅原道真が天神になる
前に、ここは何だったのか。頼朝が天神を祭る前
に何があったのかによって、その意味は全く違う
ものになってしまうのだ。

　追記：以上は私の妄説だけど、ここに別の謎が
　ある。星座早見盤が中世にあったのか。
　すばるの位置が目指す所にきちんと当たる。
　不思議だ。
　安永３年(1774)、水戸の測量家の長久保赤水が
　出版した天文書に星座早見盤に似た図が載って
　いるそうだ。早見盤の本は平面アストロラーベ
　といって、６世紀のビザンツの本に載っている
　「数学的宝石」なのだそうだ。天体の高度計測、
　時刻や観測地の位置の決定、測量にも使うとい
　う。これを多分王者の秘宝というのだろう。
　　参考：なにわの科学史のページ 　

     
　
　 ＊＊＊亀子＊＊＊（11 Aug.2007-30May2012)