鎌倉、まぼろしの風景。

     イメージの翼に乗って中世鎌倉を妄想するページ。

亀ケ谷の地蔵

:::::目次:::::

:::Topにもどります。:::

:::1.天平の星の井19Apr:::

:::2.虚空蔵菩薩堂:::

:::3.霊仙山20Apr:::

::: 4.飛竜の都市23Apr:::

:::5.分水嶺25Apr:::

:::6.道の意匠27Apr:::

:::7.修験道の現在形29Apr:::

:::8.鎌倉の白い岩:::

:::9.セキサンガヤツ:::

:::10.若宮大路のカレンダー:::

:::11.神奈川県の鷹取山:::

:::12.鎌倉の正三角形:::

:::13.鎌倉の名の由来:::

:::14.今泉という玄武:::

:::15.夜光る山:::

:::16.星の座標:::

:::17.円覚寺瑞鹿山の端:::

      ・・・・・・・・・・      
・      :::18.鎌倉の獅子:::      ・
・        :::19.望夫石:::        ・
・      :::20.大姫の戦い:::      ・
      ・・・・・・・・・・      


亀の謎 集

知る者は言わず
言う者は知らず
《老子》






資料集


きっかけ


はじめに


大姫の戦い          28 Jun.2007

     
 源頼朝の長女大姫は、6才で許婚者の源義高と出会う。敵方の
人質だけど、10才の少年を彼女はとても好きだった。少年と少
女は皆に愛された。ままごとの様な夫婦は1年を過ごしている。
 1184年1月、義高の父の木曽義仲は宇治川の合戦で討たれ
る。次は義高が殺される番だ。夫を生かす為にはどうするか、大
姫は一生懸命考える。義高は恐怖に怯えて、一人で逃げると言い
出す。馬のひずめに綿を巻けば、音を立てずに逃げられるなどと、
7才の姫は信じてしまう。同じ年頃の海野小太郎氏幸を身代わり
にして、本当に逃がしてしまったのだ。
 身代わりの海野小太郎氏幸は、その後どうなったんだろう。協
力した側近はどんな仕打ちを受けただろう。義高の逃亡をきっか
けに、鎌倉から離れた入間川で、彼は殺される。11才だった。

 『父が自分の夫を殺した。周囲の女房たちも、母政子まで、彼
の死を納得していた。彼の命を本当に守れたのは自分一人だけだ
った。それをあっさりと手放してしまった。ずっと手をつないで
いれば良かった。引き離されそうになっても、彼の手を離しては
ならなかった。

 父頼朝が嫌いだ。理解してくれても、味方してくれない母政子
が嫌いだ。何より彼を殺してしまった自分が嫌いだった。』

 大姫は病気がちになる。今の人は統合失調症だと推察する。私
はそうは思わない。大姫は武家が嫌いだった。勢力を誇示する事
で牽制し合い、バランスを計る。武家のやり方が嫌いだった。
最後は殺し合いで決着する、そのシステムが嫌いだった。
 仏を語り、神を奉るその人が、人の首を狩ってくる事が許せな
かった。その仕組みの頂点で、将軍の娘である自分の非力が許せ
なかった。彼女は一人で戦い始める。

 娘の笑顔が見たくて、様々にしかける催しを、大姫は病気だと
言って断る。出席しない。笑わない。ご家人達の面前で。誰が見
てもそれは、父頼朝への抵抗だ。許さない。答えない。
 あからさまな反逆だ。

 大姫は19才で突然に亡くなってしまう。死を望んでいたので
はない。将軍に義高の殺害を、生涯をかけて突付けることが彼女
の目的だったと思うから。
 一途で強情な姫は、何も言わなくともその存在だけで、家臣の
心を凍らせたのだろう。あるいは入内の計画が、彼女の命を縮め
たかもしれない。

 大姫の墓は、どこにあるのかわかっていない。探すな、という
事だ。拝殿は扇が谷の岩船地蔵堂で、ここで谷戸の奥に向かって、
彼女の心が安らかである様に祈る。

 山崎のしし石と二階堂の獅子巖と望夫石の、3つの岩を仕掛け
た人が、誰かは判らないけれど、三匹の獅子舞に見立てた事が、
私には救いに思える。獅子舞はどれも命を謳歌する喜びの舞だか
ら。そして、三匹目の獅子に成り損ねた岩を、望夫石と名付けた
ことにも、あわれと言う言葉しか思い浮かばない。望夫石は佐賀
県の唐津にある。戦争に行く恋人に見える様に、岩の上に登った
姫がそでを振って別れを嘆いたと言う。
幼い大姫も、いつかきっと会える日を願って、夫を送り出したに
ちがいないのだから。

参照:田島神社、佐用姫神社
追記:三匹獅子舞は、壮年の獅子と若い獅子と雌獅子で舞われる
のだそうだ。二階堂の獅子巖を源義高(11才)と呼んで、山崎の
しし石を一条高能(22才)と呼ぶのはどうだろう。大姫に結婚を
拒絶された高能さんも父親達の競争に巻き込まれた人だから。
ヨシタカとタカヨシ。似すぎててちょっとわかりにくいけど。

 
  ***亀子***
(28 Jun.2007 - 6 Jun.2012)
 
     

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