鎌倉の東の端に朝比奈切通しがあって、その南の
朝比奈山山頂133mに熊野神社がある。ハイキング
コースが通ってはいるけれど、全くの山中だ。横浜
市金沢区にあるために、鎌倉の観光地図には載って
いないこともある。頼朝の時代に熊野三柱大神を勧
請し、北条泰時が切通しを整備した時に建立したの
だそうだ。この一社に熊野本宮大社と熊野新宮大社、
熊野那智大社をお祀りしてあるらしい。
鎌倉市内には私の知る限りでは、あと五つの熊野
神社がある。この朝比奈の神社のぴったり真西にあ
るのが、手広の熊野神社だ。鎌倉市の西端にあって、
青蓮寺の境内と思われる神社の背後には、垂直に切
られた崖がある。その下には丸くなだらかな岩盤が
あった。今は水が涸れてしまったけれど、この奥の
分譲地が出来る前は、ここは見事な滝だったと思わ
せる風景だった。
二つの熊野神社を地図上で結ぶと、線上にたくさ
んの名所旧跡が並ぶ。後醍醐天皇の第一皇子である
護良親王の墓、鎌倉幕府以前からある謎の荏柄天神、
源頼朝の墓、鶴岡八幡宮本殿、相馬師常墓、伝阿仏
尼墓、源氏山山頂の頼朝像、銭洗弁天、深沢クリー
ンセンター、そして手広の熊野神社だ。クリーンセ
ンターは冗談ではなくって、学校や公民館など、ま
とまった広さの公的建造物は何かの跡地だったりす
るから要注意なのだ。墓ばかり目立つ気がするが、
実際は有力者の屋敷跡が多い場所だ。
この一列をどう解釈すればいいだろう。もちろん
鎌倉は旧跡が多く、無作為で線を引いてもいくつか
の寺社にかかる可能性はある。でもやはり、これは
設計されたものだと思う。
この熊野ラインの中心はJR横須賀線の真上、伝阿
仏尼の墓の近くだ。阿仏尼は「十六夜日記」を書い
た人で、和歌の世界では著名な人だそうだ。墓には
「阿仏」と彫ってあって、いかにも「伝」が付く様
子だった。つまり、阿仏尼の墓ではありませんが、
そうだと思って大事にして下さい、ということだ。
やぐらの中に納められた石作りの六重の塔だった。
六重の石塔。鎌倉のどこかでこの様な石塔を何回
か見た事がある。奈良市の国見山の山中にある奈良
時代の塔と、国指定史跡の大隅国分寺の石造六重塔
の写真がネットで見る事が出来た。六重の塔はバン
コクや韓国にもあるそうで興味深い。
形は違うけれど岡崎市の切越町にある八面塔とい
うのも六層で謎が深まる。
参照：国見山・塔ノ森
ところで、このやぐらの隣はお稲荷さんだった。
岩をコの字に大きく切って、お祀りしてあった。社
の真上の高い岩面に、丸い穴があいていた。気にな
った。棒でもさして提灯でも吊るしたのか。灯籠が
あるんだから不要なのに。天幕でも吊るしたのか。
社には屋根が有るのに。
（この穴は別の岩壁にも見つかった。
そこは如来の頭上だった。なんだろう。）
傍にあった幟には扇要（おうぎ かなめ）と小さ
く書いてあった。扇要稲荷と言うのだろうか。岩の
その穴が扇のかなめ、中心というのだろうか。
この地は「扇の井戸」があるから扇が谷と言うの
だと思っていた。でも逆だったらどうだろう。扇が谷
に作った井戸だから扇型にした、のだったなら。ここ
の地形はまるでヤツデの葉みたいに扇子型で、この場
所がかなめの場所なのだ。そうして熊野ラインの中央
でもある。
この熊野ラインの中心地から、真っ直ぐ北上する
と、そこには何があるか、正三角形は描けるのか。
やってみた。
ーーー22.熊野+しし石に続きます。ーーー
＊＊＊亀子＊＊＊（4 Jul.2007)
