きっかけ 
きっかけ



Topに もどる
     世界遺産ってなに。

世界遺産という保護活動のおかげで、TVで気軽に絶景が見れる。
すばらしい。でも、世界遺産と言うと、どうしても戦争の事を思う。

戦争を始めるのは国のトップの人だけれど、実際に爆弾を落とすのは
普通の兵士、半年前まで大工さんだったり、郵便局員だったりする人だ。
眼下の街が自分に関係のない見知らぬ街であるよりも、TVで見た事のある
世界中の人に愛されている世界遺産の街だとしたら、もしかして、
爆弾降下のボタンを押す前に、急に体調不良になるかもしれない。
基地にもどって、延期になるかもしれない。
そういう危機感を持った、世界遺産認定の様な気がするのだ。

だから嫌なのだ。いったい、守るべき文化遺産って何だろう。
世界遺産に認定されなかった街は、文化的に無価値、ではない、絶対に。
絶対に爆撃されたくない文化遺産、それは病院や学校や住宅の事だ。
今生きている街だと思うのだ。いま笑って遊んでいる子供の事だと思うのだ。
だから、世界遺産をTVで紹介するたびに、どこの国の人も同じく
安心して暮らせる場所を営々と作って来た事を思う。そうして
取り上げられない、圧倒的にたくさんの、故郷の国々があることを思う。

だから、小さいお寺や神社から、自分で調べ始めたのでした。
そうしたら、どこもかしこも、中世鎌倉に繋がる正に鎌倉幕府の遺跡の
ど真ん中、だったのでした。あたりまえの事ですが。
鎌倉は世界遺産になるのでしょうか。ならなくても、大事な故郷です。


///////////////////

     地図を持って、三角定規を持って、出かけよう。
<宗像三女神+三ツ星+三角測量>

倉敷に行くチャンスがあって、倉敷の阿智神社について、調べた。
九州の宗像市に3つの神社を持つ宗像三女神を奉る神社だった。
江ノ島の神社と同じなので、とても気になってしまった。
宗像市に辺津宮があり、海上の大島に中津の宮があって、
はるか60kmも先に沖ノ島の沖津の宮があると言う。そこは
禁忌によって守られていた。

『私』がここに立っていて、「拝殿』がそこにあって
「祀るべき本体』はあちらの彼方なのだ。

新潟生まれの私は、すぐに佐渡島を思った。
佐渡の灯が夜には見えたのだ。
神社の常夜灯は、夜海上に見えただろうか。
こことあそこと、その向こう。
三角測量を連想させる。
阿知族は海の民、航海術に関わる技術だ。
海上から見た火山、岬、島。
船が移動するにつれて、その角度を変える。
現在地は距離ではなく角度によって知れるのだ。

 3人の海の神。航海の導き手。
それではオリオン座を登場させねば。
季節ごとに昇る位置を変える太陽とは違って、
星座はいつも同じ場所から昇ってくる。
オリオンの三ツ星なら、縦に3つ並んで、
真東から昇る。すばらしい指標だ。
沈む時は真西に。水平に3つ地平線に並ぶ。
釈迦三尊、薬師三尊像みたいだ。
星の信仰はアマテラスの信仰にも仏教にも
置き変えられて広がって行く。
阿智神社にも東方参拝所があった。
でも、重要なのは西の崖の上に会った絵馬殿だ。
西に広がる展望を何の為に使うのだろう。
何の為の絵馬殿なのだろう。そう思って
上を見ると、そこに初めて見る算額があった。
江戸時代の幾何学の問題と回答が
額装されて誇らかにあった。

日本で初めて作られた地図を行基図というのだそうだ。
日本中に行基が開いたと伝えられるお寺がある。
温泉を発見し、貯水池を作り、港を開いたとウィキペディアにあった。
博学の吉備真備と同時代、役行者とも同時代。
そう、役行者の伝説がある。
昔は馬で移動してみて、その距離を表現していたのに、
彼は一晩で遠くの山まで行って帰って来たという伝説。
角距離で作図をすれば、歩かなくても距離は知れる。
海上ならなお、この方法しか無い。

算額がかかる神社は、アマテラスではない系譜の神社
なのではないだろうか。
星の神社。いみじくも南方熊楠が天皇に語った様な神社。
関東、陸奥に広がる地域と、北九州。
そんな思い込みで阿智神社の算額を見れば、
それは五角形の中の三角形に内接する小さな円の問題。
まるで太陽を飲み込んだ星の様にも見えてくるのだった。

そのときはまだ、天台宗のマークが
3つの星からなる事など知らなかった。
その星がオリオンの三ツ星である事も知らなかった。
天台の天は山の頂を表し、台は星を表す事も。
知ったからと言って、何が分かったわけでもない。
ただ、山の上の篝火、護摩壇、御神火(火山の噴火)が
星の様に見えただろうと想像するだけだ。

倉敷の阿知神社から下りて、大原美術館を訪ねた。
19世紀末のフランスの絵が、私たちを迎えてくれた。
「聖ジャンの祭火」シャルル・コッテ
キリスト教に取り込まれた古い信仰の祭り。
夏至の日のかがり火とその火渡りのお祭りだった。
絵に描かれた遠くの山上の篝火が、私を励ましてくれた。
私と、あちらと、その向こう。宗像三女神を追って
鎌倉めぐりを始めよう。

inserted by FC2 system