塔の辻は、交差点の道端にある石塔で、鎌倉市
内の数カ所にあったという。宝戒寺の南、笹目の
東南の２カ所、建長寺と円覚寺の前、雪ノ下の鉄
の井、浄智寺の前にあって、二重の塔に見えるが
石の損傷が激しいと新編相模国風土記稿にあった。

　何のためにあるのかわかっていない。でも伝承
はある。由比の長者の娘が３才の時に鷲にさらわ
れて、取り戻すことができなかった。路上に落ち
た骨を、娘のものではなかろうかと拾い集めて、
その場所に塔を建てた。という。
　後の人はこの塔を下馬塔と言って、馬を下りる
場所の印にしていたようだ。

　地図上にこの塔の辻の印を入れてみる。少し柄
の長い北斗七星になりそうだ。旧道巨福呂坂切通
の青梅聖天の参道前と、付属小学校のグランドの
南に塔を追加して７つの塔にしてみる。
　この北斗は小袋坂を越えて、山の向こうにも広
がるから、目視で見ることは出来ない。あくまで、
想像の中に現れる星座だ。

　空にある北斗七星は、北極星を探すのに役立つ。
柄杓のますの先を５倍に伸ばすと、そこに北極星
があるのだ。北極星は地軸の果てにあり、すべて
の星がここを中心として日周運動をする。だから
中国の星占いでは、宇宙の王、太帝子という。

　地上に北斗があるならば、当然北斗は北極星を
示す。それは来迎寺の北、泰山府君を祀る赤山ガ
谷の奥山だ。
　参照：セキサンガヤツ

　笹目にある２つの塔は、辻を挟んで南北にあり、
北にある塔はまっすぐ北を指し示し、鎌倉市大船
に至る。南にある塔は北北東を示し、きっぱりと
荏柄天神を示す。なぜ荏柄天神なのか、解らない。
赤山を示しているのかと思ったが、そうではない。
これについては後日考える事にして地図に戻ろう。

　北斗七星は形がはっきりしているのですぐにわ
かるが、この由比ケ浜の隣接した二つの塔は何だ
ろう。北斗が星座ならこれも星座かもしれない。
星座早見盤でみるとそこには明るい星は無いのだ
った。二等星ばかりの、獅子座と乙女座の間。そ
こは、天の赤道と黄道の交差点。辻であった。

　地球は太陽のまわりを１年で一周する。だから
太陽と反対にある星が夜に見える。太陽の後ろに
あって、昼間出ていて見えない星座を西洋星占い
では誕生月の星座、黄道十二宮という。中国では
二十八宿。そして笹目の塔の辻は「翼」と「軫」
の間、秋分点だった。太陽がこの位置に来た時に
秋分を迎えるのだ。

　塔の辻は天文博士による設計だった。それでは
なかなか解読されないだろうと思う。でも今は、
誰でも地図を見る事が出来るし、星座早見盤だっ
て学校でさわっているし、インターネットで中国
の宿星図も見る事が出来る。陰陽師たちが鎌倉の
地で何を図ったのか、もう少し追求しよう。

ーーー以下を33.昇竜の都市鎌倉から35.すばる遠望まで続けます。ーーー

　

     
　
　 ＊＊＊亀子＊＊＊（5 Aug.2007-30May2012)