鎌倉、まぼろしの風景。245

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リーフレット「星月夜の鎌倉と塔の辻」の続きです。星に関する事を順序立てて再構成しました。新しい話題もあります。読んでいただけたら幸いです。
鎌倉の銀の鈴社ギャラリーとJR鎌倉駅東口の松林堂さんでご覧いただけます。

245.見開かれた眼

　白鳥座の腰の当たりに、赤い卵のような巨大な赤色巨星があった。
　それは大爆発を起こして消え、平安時代のある時にすでに、肉眼では見えなくなっていた。
　それがカガセオの星、宇宙の王、天之御中主の星であったと「儺の国の星」で、著者の真鍋大覚先生は語る。
　
　星が消えるとはどんなことになるのだろう。youtubeにオリオン座のベテルギウスが消滅する特集番組が沢山あった。オリオン座の赤い星ベテルギウスは９９％の寿命を終えて、もうすぐ消え去るのだと言う。その過程を描いた動画が沢山上がっている。これをモデルにすると、白鳥座の赤い星が消えた様子も想像することが出来た。
　まず、赤い星が突然光り出し、昼でも見える眩しい白い星になる。それが数ヶ月続いて、再び星の色が赤に変わる頃、吹き出したガスが幾重にも広がっていて星雲のようにも見える。それから徐々に暗くなって４年後には見えなくなっている。
　藤原定家が明月記に引用した1054年の超新星爆発は、今は８等星のカニ星雲になっている。
　
　昼間もくっきりと見えるほどの明るい星になるなら、それは大変な変化だと思う。世界中が騒然となるだろう。やがてその光も弱まり、また赤い星になってどんどん暗くなっていく。そこで人々は星が消えるのだと、なんとなく気付くようになる。
　その後はぼうっとしたガスが残り、やがては何も無くなってしまう。そのガスの残りが、輪のようになって薄く光っていたら、どう見えるだろう。中心は赤くて一層暗いのだったら。丸くはなくアンドロメダ銀河のように楕円形に見えたとしたら。
　
　それは見開かれた眼のように見えたのではないか。と気付いた。
　白鳥座の腰の当たりに眩く光っていた星があって、その跡地に、見開いた眼が現れたとしたら。
　おそらく小さくて常人には見えなかっただろうと思う。でも、消えた星の跡地だと理解できる星を見る人達には、僅かな光の、薄い空のシミのようなガスが見えたかもしれない。その姿が、見開かれた眼の形をしていたとしたら。どんなに恐ろしい発見だっただろう。
　あそこに、まばたきもしない眼が、見つめている。
　見られているのは私達だ。
　それは恐怖でしかない。どう見ても愛情深い神の眼であるとは思えなかったのではないか。冷酷な無慈悲な超越者の眼が、小さく、白鳥座にあった。としたら。

　古代エジプトにホルスの眼というシンボルがある。ハヤブサの頭を持つ天空と太陽の神だそうだ。右目は太陽を、左目は月を象徴していた。ウジャトの目とも言われ、この場合は頭にコブラをつけた女神の姿で描かれている。
　ホルスの左目はセト神と戦った時に奪われたと言う。奪われた目が天空の彼方からこちらを見つめている。
　
　ネパールの寺院の塔の高い所に、目が描かれていた。高い所から見つめる目は、星空に実在したのではないかと思った。
　
　石工の組合だったフリーメイソンのシンボルに、ピラミッドに描かれた目がある。プロビデンスの目、見開かれた眼だ。白鳥座の消えた星の跡に眼が現れたとしたら。それはピラミッドの眼になるのだろうか。
　PSPプレイステーションポータブルで、紀元前2500年のエジプトを再現してみた。白鳥座が北西に沈んでいった。その時の白鳥座のデネブが、ピラミッドの頂点になっていた。ギザのピラミッドに見開かれた眼を持つ三角が降りて来る。その眼を早々と遮るのがピラミッドであるように思えた。

　
　メキシコ南東部のマヤ地区にあるチチェンイッツァのピラミッドは４つの聖なる泉セノーテによって守られていると言う。
　その泉は東西南北ではなく斜め十字にクロスしていて、まるで天頂に上がった白鳥座の様だった。その中心にピラミッドがあった。閉じる事の無い眼が天から地上を見つめている。その恐怖を王の権威にすり替える為に、どんな祭りがあったのだろうと思った。
　
　これはこと座にあるリング星雲。ハッブル望遠鏡の写真だ。円形だけど、眼のようにも見えた。