+キリシタンと江戸文化+ + ブログです。沸き出す謎を書き留めるところ。 鎌倉、まぼろしの風景(ブログ) ホームページが移動しました。過去の記事はこちら。新しいアドレスで現在も進行中です。 鎌倉、まぼろしの風景(HP)********** 「鎌倉、まぼろしの風景」から、小さなリーフレットができあがる。表紙も入れて、わずかに32ページだ。
「星月夜の鎌倉と塔の辻」という題名で、地湧社から出版される。作者はきし亀子。デザイナーのグッドアイデアで、7月7日が出版日になった。 北鎌倉のアーティスト、夢草さんが、美しい挿絵を描いてくださった。5月の薫る風の中を歩き出して行く美女が表紙になる。 そのリーフレットの続きを、この場所からまた始めようと思う。
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+207.六所神社のすばる星(すばる星2) すばる星は真東より少し北側から登ってくる。 遠い山のむこう側から昇ってくると、星は遠くにあるんだなあと感じる。 それからすばる星は、天頂高く上がってほぼ頭上にくる。星と自分の間に、遮るものは雲しかない。だから星は急に近くに来た様に見える。はしごをかけたら届きそうにも見える。自分が星に見つめられている様にも感じられる。文字通り「星の下に」自分がいるように感じるものだ。 それから西へ降りてきて、真西より少し北側に沈む。 昔の人は方位を十二支で表していた。これは意外と便利なものなので、私も使ってしまうことがある。
子 ね 0度 北
丑 うし 30度
艮 うしとら45度 北東
寅 とら 60度
卯 う 90度 東
辰 たつ 120度
巽 たつみ 135度 南東
巳 み 150度
午 うま 180度 南 だから子午線(しごせん)というのは「北」と「南」をつなぐ線だ。
すばる星はだいたい寅の方位から昇ってくる。一年中同じ所から昇る。夏は昼間に出ているので見えない。 冬であったら日没から夜明けまで、一晩中ゆったりと天の中央を通っていくすばる星が眺められるだろう。 すばる星は地上を治める王の星であると伝えられた。そのことを何度か書いていたのに、気付かないこともある。改めて、すばるは国を治める王であった事を再考する。 すばるとは「統」と書く。束ねるとか一つにまとめるとかいう意味だ。それで六連星(むつらぼし)とも呼ばれる。 それは「六人の王が居た」事を示すのではないか、と思いついた。 「六人の合議制」で、地上を治める王達がすばる星で表されているのではないか、と。 神奈川県中郡大磯町に六所神社がある。相模国総社だそうだ。六つの神社を代表する神社である。 1)寒川(さむかわ)神社 高座郡寒川町宮山 2)川匂(かわわ)神社 中郡二宮町山西 3)比々多(ひびた)神社 伊勢原市三ノ宮 4)前鳥(さきとり)神社 平塚市四之宮 5)平塚八幡宮 平塚市浅間町 6)六所(ろくしょ)神社 中郡大磯町国府本郷 この六社の神様が毎年5月5日に神揃山(かむぞろいやま)に集まって、不思議な会議を開く。その様子を再現しているのが相模国府祭(さがみこうのまち)の古式座問答である。神奈川県の無形民俗文化財に指定されている。 参照:比々多神社のHP 相模国府祭六社めぐりパンフレット(裏) 昔、相武(さがむ)の国と磯長(しなが)の国が合併して、相模国の国になった。そこで相模川の東の寒川神社と、西の川匂神社のどちらを一宮にするか、決めなければならなくなった。虎の敷皮を敷いた上座へと寒川神社と川匂神社は、勧めあい譲りあい、3度繰り返して決着がつかない。比々多神社と前鳥神社、平塚八幡宮が思案して、比々多神社が仲裁をする。「いずれ明年(みょうねん)まで」。 相模一之宮は寒川神社だと書いてあるけれど、それは表向きで、本当はまだ決まっていないらしい。2012年である今年もまた、来年に持ち越しをしたはずなのだ。どちらが一番か、決めていないのだ。これはすごいことではないか? 普通なら声高に議論してケンカ腰になる様な議題だ。でもここでは誰も何もしゃべらない。静かに黙って長引く会議を皆が見守っている。それはこれが現実の会議の姿を模した祭りであるからなのかもしれない。醜い争いをせず、譲り合い、静かに神様達は集っている。 やがて、決まらないので来年まで保留ということになる。 武力で決着を付けようなどという無粋な神様は居ない。最後まで非暴力である。そうして各々、自分の神社へ帰っていく。祭りの終わりである。 何と素敵なお祭りだろう。決着を焦る必要は無いのだ。来年になれば、メンバーが変わっているかもしれない。世代交代があったり、病欠があったり。来年は来年で状況は変わるだろう。一番の神様を選ぶとしても、自然に決まらないのなら、決まるまで無理をしない事だ。 もしかしてこれが相模国の伝統なのかも知れないぞと、思う。あの後北条氏の小田原評定という不名誉な評判は、もしかして、相模国の伝統に則った作戦だったのかも知れないぞと。笑。 決定をズルズルと引き延ばすのは良い事ではない。でも国府祭(こうのまち)の場合、悪くすると戦争になってしまう様な議題なのだ。それを徹底して非暴力で回避するには、「決まらないから、また来年ね」と言う。その作戦はとても賢い選択だと思うのだ。それをお祭りにして、毎年毎年、繰り返して演じてみせる。皆に浸透するように。 この町で育った子供達は、暴力で解決しようとする人達に向って、「来年まで保留!」と言うだろう。そんな拍子抜けの提案をする大人に育つだろう。それこそ、この祭りが愛されて廃れる事無く続いて来た理由だと思ってしまう。 六所神社とウィキペディアで引くと、全国にたくさんの六所神社があることがわかる。
a 六所神社 山形県鶴岡市 出羽国総社
b 六所神社 山形県鶴岡市
c 六所神社 現名「大國魂神社」 東京都府中市 武蔵国総社
d 六所神社 千葉県館山市 安房国総社
e 六所神社 千葉県市川市 下総国総社
f 六所神社 島根県松江市 出雲国総社
g 六所神社 福岡県糸島市
これらの神社は皆、六人の王が合議制で国を治めた記憶を伝えているのではないか、と想像してみた。 なぜ六人か、というと。それはすばる星が六連星(むつらぼし)だからだ。 星神を祀る国々がこんなにあったんだと、あらためてながめてしまう。
六つの星というと、南斗六星も思い出されるだろう。六個の星がヒシャクの形に連なっている。南に低く昇る星で人間の誕生を司る。 東京都府中市の大國魂神社c(六所宮)には「くらやみ祭」という奇祭があるそうだ。5月5日(相模国府祭と同じ日だ)に、町中が暗闇になったという。今は変わっているけれど、古くは歌垣の形を残していて(1961年まで?!)、祭りの後にはたくさんの子供が生まれたんだろうなあと思わせる。この六所神社は南斗六星の神社なのかも知れないと思った。 いろんな六所神社があるのだろうけれど、大磯町の六所神社は「すばる星の神社」であると確信する。その証拠が国府祭(こうのまち)にはっきりと示されている。 すばる星と南斗六星の違いは、昇ってくる方角にある。南斗六星は巽の方から昇ってくる。すばる星は寅の方角だ。国府祭はこの寅をアピールしているのだ。国府祭には虎の敷き皮が使われる。それを広げて、あの静かな会議は始まるのだから。笑。
大磯町 六所神社
追記:Wikipediaにあった日本各地の六所神社を、Googleマップで眺めてみた。 神社の東側に、寅の方向に伸びる旧道があった。あるいは細長く真っすぐに作ってある畑が見つかった。 昔、六所神社の境内が広かった時代に、神社からこの道路に沿って空を見る事が出来たのだろうなと思った。視界を遮らない道路や畑は、昇ってくるすばる星を見るために設計されたものだ。 地上に描かれた意匠はすぐに消すことができない。それで困った事もあったのかもしれない。神社の周辺には家が立ち並んで、もう昇る星を見る事は出来なくなっている。でも、ちょっと離れた所には旧道が残っていて、それは今も寅の方角に視線を誘う。 地図に僅かに残った旧道から、すばる星を眺めていた昔の人達に寄り添うことができると思った。 b: 並んだ長方形の水田の中に、すばる星の昇ってくる方に向けて、農道と水路が延びている。そこだけ斜めの道があって興味深い。
d: 川を挟んですこし東に、すばる星の昇る方向に向かう旧道がある。わずかに残された直線道だ。南北に走る河は相模川を思わせる。ここも天の川に対比された場所なのかも知れない。川向こうの八幡神社に立ってみる。西側に川と六所神社がある。北西から南西に天の川があって、その向こう岸、真西にすばる星がある。それは現在の星座早見盤で見れば、2月2日の22時半。3月3日の20時半。5月5日の16時半だ。五月なら、沈む太陽の後ですばる星が沈む。見えない星である。参照:黒川能を地図で調べる
e: 隣接の県道が整備された時に、神社の参道も変えられてしまったのだろうか。辻に当たる神社の入り口に向けて、すばるの昇る方向へ延びる旧道が東側に少し残っている。
f:出雲国庁跡のすぐ南に六所神社がある。現在はその南に川がある。左上から右下にわずかに傾斜した川だけれど。もし、これが昔、北西から南東へと大きく流れていたら、2月2日の天の川と同じになる。星座早見盤で天頂の位置とは、観測者の位置だ。出雲国庁跡に立ってみれば、目の前にすばる星が、六所神社がある。面白い。
g: 拝殿の額に熊野三所大神、住吉三所大神と書いてある。合計で6つの神様。住吉三神は星の神だ。
神社の前に交差点があって、すばる星が昇ってくる方向へ向けて、一直線に畑が続いている。視界を遮らない工夫が数百年、あるいはもっと、続いていたのだろう。見事だ。
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***亀子*** ( 19 Jun. 2012)
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十字形手水鉢(神奈川県藤沢市)
:::::目次:::::
:::Top最新のページ::: ▲・・・地図上の直線 地図に線を引くとわかる設計 (ランドデザイン) ★・・・地上の星座 天体の運行を取り入れた景観
:::1.天平の星の井19Apr:::
:::2.虚空蔵菩薩堂:::
▲3.霊仙山20Apr:::
:::4.飛竜の都市:::
:::5.分水嶺:::
▲6.道の意匠:::
:::7.修験道の現在形:::
:::8.鎌倉の白い岩:::
:::9.セキサンガヤツ:::
★10.若宮大路のカレンダー:::
▲11.神奈川県の鷹取山:::
▲12.鎌倉の正三角形:::
:::13.鎌倉の名の由来:::
:::14.今泉という玄武:::
:::15.夜光る山:::
:::16.下りてくる旅人:::
:::17.円覚寺瑞鹿山の端:::
:::18.鎌倉の獅子(1):::
:::19.望夫石(2):::
:::20.大姫の戦い(3):::
▲21.熊野神社の謎:::
▲22.熊野神社+しし石:::
▲23.北鎌倉の地上の昴:::
★24.ふるさとの北斗七星:::
★25.労働条件と破軍星:::
★26.北条屋敷跡の南斗六星:::
:::27.星と鎌と騎馬民 :::
★28.江の島から見る北斗と昴 :::
★29.由比ケ浜から見る冬の星 :::
:::30.鎌倉の謎(ひと休み) :::
▲31.御嶽神社の謎:::
★32.塔の辻の伝説(1) :::
★33.昇竜の都市鎌倉(2):::
★34.改竄された星の地図(3):::
★35.すばる遠望(小休)(4):::
▲36.長谷観音レイライン:::
★37.星座早見盤と金沢文庫:::
▲38.鎌倉の墓所と鎮魂:::
▲39.ふるさとは出雲:::
▲40.義経の弔い:::
▲41.「塔の辻」の続き:::
▲42.子の神社:::
:::43.松のある鎌倉(1):::
:::44.星座早見盤と七賢人(2):::
:::45.山崎の里(3):::
:::46.おとうさまの谷戸(4):::
:::47.将軍のいましめ(5)井関隆子:::
:::48.ふたつあることについて:::
:::49.万葉集の大船幻影(休憩):::
:::50.たたり石:::
:::51.鎌倉の十三塚:::
★52.陰陽師のお仕事:::
▲53.坂東平氏の大三角形と星:::
▲54.大船でみつけた平将門:::
▲55.神津島と真鶴:::
▲56.鷹取山のタカ (八王子市と鎌倉市):::
▲57.鷹取山のタカ2(鷹の死):::
▲58.鷹取山のタカ3(宝積寺):::
:::59.岩瀬、伝説が生まれた所:::
▲60.重なり合う四神:::
:::61.洲崎神社:::
:::62.語らない鎌倉:::
:::63.吾妻社:::
▲64.約束の地(小休):::
★65.若宮大路の傾き(星の都1):::
★66.國常立尊(星の都2):::
★67.台の天文台(星の都3):::
▲68.鎌倉の摩多羅神:::
★69.地軸の神(星の道1):::
+++おわびと訂正+++
★70.鎌倉と姫路(星の道2):::
★71.頼朝以前の鎌倉(星の道3):::
★72.環状列石のしくみ (五芒星1)::: ★73.環状列石の使い方 (五芒星2)::: ★74.関谷の縄文とスバル (五芒星3):::
▲75.十二所神社のウサギ:::
:::76.針摺橋:::
▲77.平安時代のジオラマ:::
▲78.獅子巌の四神 (藤原氏の鎌倉):::
▲79.亀石によせる:::
▲80.山頂の古墳:::
:::81.長尾道路の碑 (横浜市戸塚区):::
★82.柏尾川 天平の大船幻想1 :::
★83.玉縄 天平の大船幻想2 :::
★84.長屋王 天平の大船幻想3 :::
★85.万葉集と七夕 天平の大船幻想4 :::
★86.玉の輪荘 天平の大船幻想5 :::
:::87.実方塚の謎(1) 鎌倉郡小坂郷上倉田村:::
:::88.戸塚町の謎(2) 鎌倉郡小坂郷戸塚町:::
:::89.こぶた山と雀神社(3):::
:::90.雀神社の謎(4) 栃木県宇都宮市雀宮町:::
:::91.実方紅雀伝説と銅(5) 茨城県古河市:::
:::92.北鎌倉の悲劇:::
▲:::93.こぶた山と奈良東大寺:::
:::94.王の鳥ホトトギスとミソサザイ:::
:::95.悪龍と江の島:::
▲96.海軍さん通りの夕日:::
▲★97.今泉不動の謎:::
▲98.野七里:::
▲99.染谷時忠の屋敷跡:::
★100.三ツ星とは何か (またはアキラについて):::
:::48.ふたつあることについて:::
▲101.亀の子山と磐座、火山島:::
★102.秦河勝の鎌倉:::
▲103.由比若宮(元八幡):::
▲104.北鎌倉八雲神社の山頂開発:::
▲105.北鎌倉 台の光通信:::
★106.鎌倉の占星台:::
★107.六壬式盤と星座早見盤:::
:::108.常楽寺 無熱池の伝説:::
:::131.稲荷神社の句碑:::
:::132.鎌倉に来た三千風:::
:::146.幻想の田谷 横浜市栄区田谷:::
▲150.鎌倉 五芒星都市::: ▲158.第六天社と安部清明碑::: ▲159.桜山の朱雀(逗子市)::: ★160.双子の二子山と寒川神社::: :::161.ゴエモンの木::: :::134.ここにあるとは 誰か知るらん:西郷四郎、会津と鎌倉::: :::166.防空壕と遺跡(洞門山の開発)::: ★167.地上の銀河と星の王1(平塚市)::: ★
168.地上に降りた星の王2 (鹿嶋神宮、香取神宮、息栖神社)::: ★
174.南西214度の縄文風景(金井から星を見る)::: :::
175.おんめさま産女(うぶめ)伝説 (私説)::: ★
176.おんめさまとカガセオ::: ★
177.南西214度の縄文風景 2 (大湯環状列石とカナイライン):::
★
178.御霊神社と鎌倉 (南西214度の縄文風景3):::
★
179.源頼朝の段葛とカガセオ (南西214度の縄文風景4):::
:::
184.鎌倉の小倉百人一首:::
:::
185.鎌倉の小倉百人一首 2:::
:::156.せいしく橋の伝説:::
:::109.北谷山福泉寺の秘密:::
:::192.洞窟と湧水と天女:::
:::198.厳島神社の幟旗:::
:::206.庚申様はすばる星(すばる星1):::
:::207.六所神社のすばる星(すばる星2):::
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