鎌倉、まぼろしの風景。239

　インスタグラムInstagramというアイホンの写真を公開するアプリで、海外の美しい景色の投稿写真を見ることができる。そこでfinnさんの写真で、スコットランドのスカイ島SkyeにあるストーTheStorrという岩を見る事ができた。立石だ。
　あまりにも美しい写真で、これはコンピューターグラフィックスかなと思ったくらいだ。私が知らなかっただけで、有名な Old man of the Storr という奇岩だった。崖が崩壊して残った岩塊であるそうだ。でも人の手で、整形されていると思う。あまりに「立石」であり過ぎる。
　行ってみたいと思った。まずグーグルのストリートビューで、A855線に沿って移動しながら景色を見た。これは北東から南西方向を見た景観だ。
　

GoogleMapストリートビュー
　この岩はどこから眺めるのが良いのだろう。
　衛星写真に切替えて俯瞰してみると、海の近くに不思議な台地が見えた。丸く切り取られた台地は、とても人工的な形に見えた。誰かが整地した台地だ。この台地から岩を見たのだろうか。今は北西に森があって見えない景観だけれど。

GoogleMapストリートビュー　中央が台地
　奇岩と台地を直線で結んで見た。線は海にある岩礁に行き当たる。ホルム島だ。岩と島の間を選んで、台地を作ったのだろうか。
　台地から奇岩までは315度、ちょうど北西に当たった。

Skitch by Evernote で作成。
　スカイ島で一番大きな町のポートリーの港まで、北から船で入っていくと、手前にこのストーの奇岩がみえるのだった。あれは何だ、と眺めているうちに、台地が視界に入ってきて、それが後ろの奇岩に重なる時、船は島にぶつかる。あるいは、そうならない為に、島の岩礁があって海が浅いことを知らせるために、台地が灯台として作られたのだろうか。
　この台地に立つ人がいて、北西の奇岩を見ていたのだろうなあと、思った。
　岩の後ろに沈んで行く星を探してみようと思った。
　
　愛用のプレイステーションポータブルPSPで、星空を再現した。SEGAのホームスターポータブルだ。北緯はスコットランドの古都インバネスと同じだ。インバネスが選択肢に無かったので、ノルウェーのオスロを選んだ。北緯が一番近そうだ。時代は紀元前2500年にする。
　すると白鳥座が北西に降りて来て、地上から15度という低い位置に、見事なXのマークを表した。多分ストーの巨石の上にXが乗っかって見えただろうと思った。岩の上のXは、巨人の両腕の様で、背に背負った剣の様で、そしてXの中心には、今は無い赤い巨星があった。それがストーの頭に見えただろう。背後にある天の川の濃い銀色の光を、真っ黒の立石が遮って、ストーの巨人が現れる。この時、天の川が北西から南東に横たわっていて(天の川１）、地図上の直線に重なっている。

PSPで見る紀元前2500年のスカイ島の北西の星空　白鳥座
　北西に奇岩ストー、南東にホルム島。それにそろう天の川(天の川１）。
　そして南に大きなオリオン座が、まるでストーの巨岩と対峙するように立っていた。あの三ツ星のベルトが、これも高度15度だから、北西の白鳥座の中心と同じ高さだ。はたしてオリオン座という星座があったかどうか、わからないけれど、三ツ星のベルトをした四角い巨人の姿は、古い神話のウィッカーマンの様に、真南に立っているように見えただろう。

PSPで見る紀元前2500年のスカイ島の南の星空　オリオン座
　美しい一瞬の風景だ。

　スカイ島は北緯が高く、白鳥座は天頂まで上らない。それでもこの台地に立てば、湖と海が天の川に重なる時がある（天の川２）。その時に白鳥の翼の向きは、ストーと島を結び、カササギの渡せる橋と日本で呼ばれたように、水路を渡る道筋を示しただろう。空にある白鳥座の十字路、猿田彦の辻が、スカイ島の地にも、描かれただろう。
　極東の島国日本と、ユーラシアの西の果て、同じく島国スコットランドに、同じ文化が残っている。
　夏至の夜の火祭りがあり、火渡りがある。敵の首を狩る。木を植えて森を守る。歌垣の夜祭りで子供が生まれる。天の川と道が交差するランドスケープがある。面白い。

Type1 - Saltire of Cygnus & the Lost Star The Storr,Skye Scotland
　
　追記:
　スコットランドは独立の是非を問う国民投票があったばかりだ。青の地に白いXが描かれたスコットランド旗の写真がインスタグラムには沢山あった。そのいくつかは飛行機雲が青空に交差する、飛行機が描いた国旗だった。それで突然に気づいたのだ。
　スコットランドの国旗は、白鳥座のXだ、と。
　聖アンドリューの十字 St.Andrew's Cross と呼ばれる図案は、夜空に南中した白鳥座、そのものだ。英国国教会やカトリック教会が何と言おうと、キリスト教化以前の、星の図案だ。
　猿田彦の辻が国旗だったのだ。
　さて、この旗はSaltireというそうだ。サルタイアー。斜め十字。ね、やっぱり猿田彦の辻。

Saltire サルタイアー。斜め十字。Skitch by Evernote で作成。
　
　　