鎌倉、まぼろしの風景。275

　岩手県にある縄文遺跡の御所野遺跡をYouTubeで眺めた。最期に遺跡を俯瞰すると、木々の先に双耳峰が見えた。
　あっ！
　ドローンはもっと上空に上がって、周囲から際立った双耳峰（または舟形山とも言うだろう）を写し出した。こんなに高く上がらなくても。山容は地上からでもよく見えただろう。
　地図で方位と山の名を確認した。東南東110度（東を90度として）にある二ツ森だった。

GooglemapにSkitchで作図

　　私の使っているプラネタリウムのアプリは紀元前の設定ができない。縄文時代の星空は再現できないのだ。それでいつも西暦200年を基準に星空を見ている。200年の空の東南東110度の二ツ森の上から、どんな星が昇って来るのか、眺めてみた。
　気になる景色は現れなかった。

　次に、日の出を再現してみた。地球の歳差運動に関係なく、縄文時代でも、東から太陽が昇るのが秋分と春分の日である。110度なら立春の日。冬至と春分のちょうど中間だ。２月３日頃。節分。豆まきの日である。地平線に顔を出した太陽の左側、東側に、夏の大三角があった。

GooglemapにSkitchで作図

「立春の日に日の出を眺めようと、人々は暗いうちに集まって来る。台地の、東の空がよく見える斜面に座って、星を見ている。」
　「右手にあるのが彦星。同じ高さの左手に、白鳥座。首を水平に延ばして、地平線から飛び立とうとしているみたいだね。白鳥座のデネブの真すぐ上にあるのが織姫星。地平線には分厚い天の川があって、二ツ森の姿が黒々と見えるね。あと２時間後、今日の太陽はあの二ツ森から昇ってくるんだよ。今日は立春、春の始まりの日。」

　きっと21世紀の星見達なら、そう説明するに違いない星景色。この夜の最期の星景色を見ていると、やがて太陽が空を明るくし始める。
　「こんなに明るいのに、まだ織姫星が見えるね。」

　縄文時代の星見達は白鳥座や織姫星ではなくて、どんな名前を付けていたのだろうか。

　アイルランドに残るケルトの遺産を簡潔に纏めた本がある。「ケルト、神々の住む聖地ーアイルランドの山々と自然ー」ヘクター・マクドネル著　山田美明訳　創元社アルケミスト双書。そこにイワクラや、立石、トンガリ山の風景など、興味深い絵が並んでいて、季節の節目についても書いてあった。ここに引用してみる。
「季節の祭

サウィン
　収穫期の終わりと冬の到来を告げるケルトの祭り。秋分と冬至の中間にあたる日に行われる。あの世とこの世が通じ合い、あの世の霊や妖精がこの世にやって来ると言われる。

聖ブリギッドの祝日、（イモルグ）
　春の到来を告げるケルトの祭り。冬至と春分の中間にあたる日に行われる。当初は女神ブリギッドにまつわる祭りだったが、キリスト教の広まりとともに聖女ブリギッドの祝日となった。

ベルティネ
夏の到来を告げるケルトの祭り。春分と夏至の中間の日に行われる。大きなかがり火がたかれ、その炎や煙や灰が、家畜や作物や住民を守るといわれる。

ルーナサー
　収穫期の始まりを告げるケルトの祭り。もともとは夏至と秋分の中間にあたる日に開かれていたが、やがてこの日に近い日曜日に開催されるようになった。ケルトの神ルーにちなんだ祭りで、丘や山の頂上に集まり、宗教的な儀式や競技などが行われた。」

　この四つの祭りは、二十四節気で言えば立冬、立春、立夏、立秋である。
　季節の始まりを知らしめているのだ。
　だから110度から太陽が昇る日の立春。御所野遺跡から見る二ツ森は、ブリギッテの双耳峰だ。
　往年の女優ブリジット・バルドーの、天の川のように豊かな金髪とかわいい胸を、思い出した。ブリギッドは詩と豊穣の女神であり三相女神の一人だそうだ。
　神奈川県藤沢市の江ノ島に鎮座する宗像三女神は、ブリジット・バルドー、だったんだなあ。
　
　

　