鎌倉、まぼろしの風景。157 

鎌倉、まぼろしの風景。


          
     

イメージの翼に乗って「星月夜の鎌倉」を妄想するページ。

星座早見盤と地形図を持って、鎌倉の地上の星座を探検中です。


北鎌倉の石仏

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亡備録 私的用語集
大淀三千風の日本行脚文集


+++キリシタンと江戸文化

110.東渓院菊姫
北鎌倉と豊後竹田

111.キリシタンの二十三夜

112.東慶寺の姫

113.徳川直轄地の
キリシタン

114.キリシタン受難像

115.江戸の幽霊
お岩とお菊

116.江戸の狂歌師
酔亀亭天広丸

117.江戸の蕎麦とお菓子

118.禁止された教え

119.葛飾北斎の1834年
旅する江戸人1

120.近松門左衛門の1719年
旅する江戸人2

121.大淀三千風の1686年
旅する江戸人3

122.大淀三千風の鴫立庵
123.柴又帝釈天の1779年
旅する江戸人4

124.飯島崎の六角の井

125.古狸塚

126.六地蔵・芭蕉の辻と
潮墳碑

127.キリシタン洞窟礼拝堂

128.十字架の菜の花

129.黙阿弥の白波五人男

130.大山の木食上人
旅する江戸人5

133.「忠直乱行」を読む
旅する江戸人6

135.駿河大納言忠長の遺業
旅する江戸人7

136.松平忠長の侍達
旅する江戸人8

137.許六と芭蕉

138.忠直とサンチャゴの鐘
豊後竹田と北鎌倉

139.沖の花(大分 瓜生島伝説)

140.鎌倉の庚申塔1・キリスト磔刑図
141.鎌倉の庚申塔2・嘆きの猿
142.鎌倉の庚申塔3・猿の面

143.曾根崎心中の道行き

144.義経千本桜の幻惑

145.建長寺のジョアン

147.椿地蔵と手まり歌

148.鎌倉という名の火祭り

149.玉藻ノ前と殺生石

151.不屈の第六天社(藤沢)
152.第六天の女神(戸塚)
153.玉縄城の第六天(鎌倉)

154.お花畑と後北条氏

155.落柿舎と鎌倉地蔵

157.平塚の4手の庚申塔

162.十文字鳥居と手水鉢
(藤沢市江ノ島)

163.八橋検校の秘曲と「千鳥」

164.半僧坊と明治憲法

165.夜空にかかる十字架
(明月院の谷)

169.馬頭観音の天衣(1)
170.マリアの石碑(2)
171.マリアの影を石に刻む(3)

172.六地蔵、葎塚(むぐらづか)と芭蕉(山梨県)

173.化粧するお地蔵様

180.大淀三千風のすみれと芭蕉

181.謡坂と善智鳥
(うとうざかとウトウ)

182.善知鳥と江戸大殉教

183.芭蕉の見た闇
(名古屋市・星崎)

186.キリシタンの古今伝授

187.鎌倉仏教とマニ教

188.謎の桜紋

189.西行と九尾の狐

190.○と□ (丸と四角、マリアとイエス)

191.踊場の猫供養塔(横浜市泉区)

193.貞宗院様の遺言(貞宗寺:鎌倉市植木)

194.崇高院様の山門(成福寺:鎌倉市小袋谷)

195.鎌倉光明寺54世松誉上人(書かれた文字1)

196.涌井藤四郎の新潟湊騒動(書かれた文字2)

197.鎌倉大仏縁起・(書かれた文字3)

199.扁額にある記号(書かれた文字4)

200.こゆるぎの松
(1鎌倉の小動)

201.城山公園の石碑
(2大磯の小動)

202.小ゆるぎの里
(3寒川の小動)

203.謡曲「隅田川」と田代城主

204.イボとり地蔵の小石

205.港町の杯状穴


江戸文化に
キリシタンの影響を見る。

見ず 聞かず
言はざる までは
つなげども
思はざる こそ
つながれもせず

(心に思う事を
罰する事はできない)

諸国里人談 巻三一「三猿堂」
菊岡沾凉(米山)著1743年刊



写真集
私説:キリシタン遺物と
その影響下に作られたと思われる
石碑と石仏


亀の蔵

「鎌倉、まぼろしの風景」
の要約。

書かなかったことや
後から書き足す事ども。


知る者は言わず
言う者は知らず《老子》

資料集

きっかけ

はじめに

メール* 亀子

Twitter:@ninayzorro

ブログ:鎌倉、まぼろしの風景(ブログ)

   
キリシタンと江戸文化

157.平塚の4手の庚申塔

 神奈川県平塚市に4手の庚申塔があると聞いて、見に行った。
 庚申塔に彫られている青面金剛像は普通3対の腕があって、4つの手には法輪、ロープや数珠、弓、矢を持っている。それで一番前に在る一対の腕は、胸の前で合掌していることが多い。
 鎌倉市にはたくさんの庚申塔があって、その中に2対4手の庚申塔が2つある。それは合掌する1対の腕が無くて、一番前の腕が左右に高く上がっている。まるで十字架の無いキリストの磔刑図の様に見える。
参照:140.鎌倉の庚申塔1・キリスト磔刑図

 平塚市の4手の青面金剛像は、それとは別のデザインだった。一番前の腕は下がっていて、法輪とロープ、そしてショケラを掴んでいる。裸の鬼女を持っているのだ。

 左の腕に十字の鉾を持っていた。三叉の剣かもしれない。それを腕ごと削ってあって、輪郭だけが見えている。膝から下は割られていて、踏まれた鬼は無くなっている。3猿はどれも正面を向いて並んでいて、腕と足が七宝紋の様に見える。大きなXの模様に見えるのだ。

 天という文字の下に壬戌とあるから、天和2年(1682年)と彫られていたのだろう。北鎌倉に豊後岡藩の東渓院ができて2年目。俳人の大淀三千風が日本行脚に出立する前年。徳川家光のキリシタン大弾圧時代が過ぎて30数年、徳川綱吉の時代になったばかりの頃だ。天和の治と讃えられた安全な時代で、キリシタンは見えなくなっていた頃だ。
参照:114.キリシタン受難像
参照:141.鎌倉の庚申塔2・嘆きの猿

参照:
甲斐素直先生の 「江戸幕府財政改革史」 第2章 綱吉と天和・貞享の治に、徳川綱吉の時代がどのようなものであったかが、詳しく解説されていた。徳川光圀の時代、近松門左衛門の時代。三千風の鴫立庵の時代にTVニュースがあったなら、どんな事が語られていたか想像できる様な歴史講座です。

平塚市のHPには「ひらつか図鑑」があって、そこに「ひらつかの石仏散歩」という興味深いサイトがあった。ここに掲載された青面金剛像も両腕を下げた4手の像に見える。
参照:晴雲寺の庚申塔

 平塚には中原街道と八王子街道が通っていて、東海道の平塚宿があった。中原街道は江戸と平塚を結ぶ古道で、大名行列が通る東海道の煩わしさを避けてほぼ直線の最速ルートとして庶民や商人が使ったのだそうだ。
参照:ウィキペディア
 大勢の旅人が通る街道の辻に、4手の青面金剛像は立っていたのだろう。今は神社の境内に石碑や石塔と一緒に、陰になる様に置かれているのだけれど、かつてはたくさんの人がこの像の前で祈ったに違いないのだ。

 平塚には徳川家康の別荘であった中原御殿があった。その御膝元で、Xの印の在る塔が辻々に立っている。これから江戸に入る商人達はそれを見て心強く思っただろう、と思う。江戸には関東近隣からやってきたキリシタンの末裔達がたくさん働いていたのだ。

 庚申塔は村の庚申講によって建てられた石碑だ。村の入り口にあって、病魔が村に入り込むのを防ぐ。
 それはそうだけれど、辻にある石塔は旅人の道案内でもあっただろう。その村の内情を知ることが、あるいはできたかもしれない。
 古郷にある庚申塔と同じ石工が作った塔があれば、故郷と同じ好みを持った村だなあと、思うだろう。石工が立ち寄った様に、古郷との連絡ができる村であったかもしれない。
 電話の無い時代にも、庶民は様々に工夫をしていただろう。それは「工夫」であるから、歴史としては残らないのかもしれない。

 平塚の4手の青面金剛像を見て、歴史に残らなかった人達の生活を妄想してみた。
 この庚申塔も例外無く、舟形の先端が折られていた。顔面が破壊されていた。十字架に見える鉾が削られていた。
 壊したという事を見せることが、この庚申塔の役目になっていた。
 そういう時代の変転も、この石塔は語っているのだと思った。

 この庚申塔の側に、美しい観音像があった。

 腕に巻いた天衣が浮き彫りになってふんわりと垂れている。軽やかで華奢な石像だ。お顔は若い娘さんのようで、小さな両胸が見えている。
 女性であることを表現しているこの石像は、「観音像」から少し逸脱している、と思う。そんな目で眺めてみると、お腹が少し大きいかもしれない。気のせいかもしれない。
 不思議な冠をつけたこの像は、ただひたすらに美しい。
 こんな傑作を日々眺めながら育つ子供達がいる。威圧的ではないこの観音像を大切にする大人達がいる。いいなあと思う。静かに美しく微笑む観音。そういう心情があるということを、殺伐とした世の中で思い出すこともできるのだ。

 鎌倉から足を伸ばして近隣のどの街に行っても、道端や神社の片隅に地域の誇らしい文化財があって、その時代に生きた人達の影に出会う。歴史を学ぶ事は過去に生きた人の人生を思う事、それは他者の心に寄り添う事でもあり、何より自分を捨てないことに繋がると、静かな観音の微笑みを見ながら思った。

 

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  ***亀子***( 15 Dec. 2009-8 Mar.2012)

     

   
柏原 一心坊

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・・・地図上の直線
地図に線を引くとわかる設計
(ランドデザイン)

・・・地上の星座
天体の運行を取り入れた景観

:::1.天平の星の井19Apr:::
:::2.虚空蔵菩薩堂:::

3.霊仙山20Apr:::

:::4.飛竜の都市:::
:::5.分水嶺:::

6.道の意匠:::

:::7.修験道の現在形:::

:::8.鎌倉の白い岩:::

:::9.セキサンガヤツ:::

10.若宮大路のカレンダー:::

11.神奈川県の鷹取山:::

12.鎌倉の正三角形:::

:::13.鎌倉の名の由来:::
:::14.今泉という玄武:::

:::15.夜光る山:::

:::16.下りてくる旅人:::

:::17.円覚寺瑞鹿山の端:::

:::18.鎌倉の獅子(1):::
:::19.望夫石(2):::
:::20.大姫の戦い(3):::

21.熊野神社の謎:::
22.熊野神社+しし石:::

23.北鎌倉の地上の昴:::

24.ふるさとの北斗七星:::

25.労働条件と破軍星:::

26.北条屋敷跡の南斗六星:::

:::27.星と鎌と騎馬民 :::

28.江の島から見る北斗と昴 :::
29.由比ケ浜から見る冬の星 :::

:::30.鎌倉の謎(ひと休み) :::

31.御嶽神社の謎:::

32.塔の辻の伝説(1) :::
33.昇竜の都市鎌倉(2):::
34.改竄された星の地図(3):::
35.すばる遠望(小休)(4):::

36.長谷観音レイライン:::

37.星座早見盤と金沢文庫:::

38.鎌倉の墓所と鎮魂:::

39.ふるさとは出雲:::

40.義経の弔い:::

41.「塔の辻」の続き:::

42.子の神社:::

:::43.松のある鎌倉(1):::
:::44.星座早見盤と七賢人(2):::
:::45.山崎の里(3):::
:::46.おとうさまの谷戸(4):::
:::47.将軍のいましめ(5)井関隆子:::

:::48.ふたつあることについて:::

:::49.万葉集の大船幻影(休憩):::

:::50.たたり石:::

:::51.鎌倉の十三塚:::

52.陰陽師のお仕事:::

53.坂東平氏の大三角形と星:::
54.大船でみつけた平将門:::

55.神津島と真鶴:::

56.鷹取山のタカ
(八王子市と鎌倉市)
:::
57.鷹取山のタカ2(鷹の死):::
58.鷹取山のタカ3(宝積寺):::

:::59.岩瀬、伝説が生まれた所:::

60.重なり合う四神:::

:::61.洲崎神社:::
:::62.語らない鎌倉:::

:::63.吾妻社:::

64.約束の地(小休):::

65.若宮大路の傾き(星の都1):::
66.國常立尊(星の都2):::
67.台の天文台(星の都3):::

68.鎌倉の摩多羅神:::

69.地軸の神(星の道1):::
+++おわびと訂正+++
70.鎌倉と姫路(星の道2):::
71.頼朝以前の鎌倉(星の道3):::

72.環状列石のしくみ
(五芒星1)
:::
73.環状列石の使い方
(五芒星2)
:::
74.関谷の縄文とスバル
(五芒星3)
:::

75.十二所神社のウサギ:::

:::76.針摺橋:::

77.平安時代のジオラマ:::

78.獅子巌の四神
(藤原氏の鎌倉)
:::

79.亀石によせる:::

80.山頂の古墳:::

:::81.長尾道路の碑
(横浜市戸塚区)
:::

82.柏尾川 天平の大船幻想1 :::
83.玉縄 天平の大船幻想2 :::
84.長屋王 天平の大船幻想3 :::
85.万葉集と七夕 天平の大船幻想4 :::
86.玉の輪荘 天平の大船幻想5 :::

:::87.実方塚の謎(1)
鎌倉郡小坂郷上倉田村
:::
:::88.戸塚町の謎(2)
鎌倉郡小坂郷戸塚町
:::
:::89.こぶた山と雀神社(3):::
:::90.雀神社の謎(4)
栃木県宇都宮市雀宮町
:::
:::91.実方紅雀伝説と銅(5)
茨城県古河市
:::

:::92.北鎌倉の悲劇:::

:::93.こぶた山と奈良東大寺:::

:::94.王の鳥ホトトギスとミソサザイ:::
:::95.悪龍と江の島:::

96.海軍さん通りの夕日:::

▲★97.今泉不動の謎:::
98.野七里:::
99.染谷時忠の屋敷跡:::

100.三ツ星とは何か
(またはアキラについて)
:::

:::48.ふたつあることについて:::
101.亀の子山と磐座、火山島:::
102.秦河勝の鎌倉:::
103.由比若宮(元八幡):::
104.北鎌倉八雲神社の山頂開発:::
105.北鎌倉 台の光通信:::
106.鎌倉の占星台:::
107.六壬式盤と星座早見盤:::
:::108.常楽寺 無熱池の伝説:::
:::131.稲荷神社の句碑:::
:::132.鎌倉に来た三千風:::
:::146.幻想の田谷 横浜市栄区田谷:::
150.鎌倉 五芒星都市:::
158.第六天社と安部清明碑:::
159.桜山の朱雀(逗子市):::
160.双子の二子山と寒川神社:::
:::161.ゴエモンの木:::
:::134.ここにあるとは 誰か知るらん:西郷四郎、会津と鎌倉:::
:::166.防空壕と遺跡(洞門山の開発):::

167.地上の銀河と星の王1(平塚市):::
168.地上に降りた星の王2
(鹿嶋神宮、香取神宮、息栖神社)
:::
174.南西214度の縄文風景(金井から星を見る):::

::: 175.おんめさま産女(うぶめ)伝説 (私説):::
176.おんめさまとカガセオ:::

177.南西214度の縄文風景 2
(大湯環状列石とカナイライン)
:::

178.御霊神社と鎌倉
(南西214度の縄文風景3)
:::

179.源頼朝の段葛とカガセオ
(南西214度の縄文風景4)
:::

::: 184.鎌倉の小倉百人一首:::

::: 185.鎌倉の小倉百人一首 2:::

:::156.せいしく橋の伝説:::
:::109.北谷山福泉寺の秘密:::
:::192.洞窟と湧水と天女:::
:::198.厳島神社の幟旗:::


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